vol.20 お酒と匂いの話 2009.8|兵庫県神戸市「兵庫」駅から徒歩2分の耳鼻咽喉科。

深澤耳鼻咽喉科

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深澤耳鼻咽喉科通信

vol.20 お酒と匂いの話 2009.8

病院で、飲酒の話など、少々不謹慎かもしれないのですが、ニオイの話のひとつとしてご勘弁ください。

私が大学病院に勤務していた頃の話です。
ある時、初老の男性が、ニオイがわからない、とのことで来院されました。早速診察すると、鼻茸(鼻の中にできるポリープ)があって、そのためにニオイがかなり鈍くなっていました。 聞くと、とある灘の酒造の杜氏を長年されていて、“若いもんにはまだ負けられへん”、とのことです。副鼻腔炎(蓄膿症)もあったので、手術治療を行いニオイがその後しばらくして改善しました。 
  日本酒は日本の伝統文化が生んだ飲み物の傑作と思うのですが、その要が杜氏と呼ばれる職業です。米を発酵させて、原酒をつくり、そこから絶妙にブレンドしたうえで統一した味・風味に仕上げる大切な役割です。

それから、しばらくたって、今度は20歳代の若い女性が、同じくニオイがわからない、とのことで来院されました。やはり、鼻茸・副鼻腔炎があり、しばらく薬の治療を行ったのですが、ニオイの改善がなく、手術治療を行いました。 この方は、将来ソムリエになることが夢とのことで、近いうちに筆記試験があるとのことで、手術のときの入院中も、ワインの勉強などをされていました。もちろん実技試験の時にはきちんとニオイが戻っていないとまずいわけなのですが、手術後ニオイも回復しました。
  その後の試験の結果は、残念ながらわからないのですが、ソムリエとは食事の際に、よりおいしく食事が楽しめるように、その食事にあったワインの選定から、場の雰囲気つくりなどにも携わる重要な役目があります。ワインの知識ももちろん、食材やら、その地域の歴史やら知識も把握しておかなければ一流のソムリエとはいえないようです。
  ワインは、ヨーロッパがはぐくんだ、とても素敵な伝統文化の一つであると思います。もちろんワインを楽しむためには、ニオイはかなり重要です。

話は変わって、スコットランド(英国)には、これまたすばらしいウイスキーがあります。スコッチウイスキーといえばウイスキーの王様といえると思います。最近、スコッチウイスキーが日本でもかなり自由に手に入るようになり、とくにシングルモルトと呼ばれるスコッチの人気があるようです。麦とビートとよばれる物質を発酵させて蒸留させることで出来るウイスキーですが、おもしろいことにスコッチの蒸留所によって全くちがったニオイ・味わいになります。海のそばで長年(10-20年)樽につめられたスコッチは、磯の香りがします。スコッチウイスキー愛好家の間では、スコッチのニオイの表現として、スモーキー(煙くさい)、石鹸のにおい、などと変わった表現の仕方をしているようです。

お酒と匂いは、きっても切れない嗜好品としての関係です。 私たち耳鼻科医師としては、なんとか嗅覚障害の患者さんがよくなって、すばらしい嗜好品を楽しめるように努力したいと思っています。

ただし、アルコールは節度ある飲み方をしないと、せっかくの芸術品が台無しですし、もちろん健康にもよくありません。

歴史ある、お酒を大事に楽しむためにも、マナーを守って、少量を楽しむようにしたいものです。
もちろん、未成年の方・妊娠されている方は、脳の発育などの障害、胎児への悪影響を来たすこともあるので、お酒は絶対に飲まないようにしましょう。

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