2011.05.06
気管支喘息はいまだ呼吸器疾患の重要な病気です。近年では、喘息に対する治療の考え方が変わったり、喘息治療に対する患者さんの理解が進み、治療効果も上がってきています。
特に、喘息は発作が起こってから治療するのではなく、発作を起こさないように予防的な治療が主体となってきました。
これには理由があります。喘息発作がおこる度に、気管支の粘膜はひどい炎症を起こし、気管支の粘膜は分厚く腫れますが炎症がおさまると元にもどります。しかし、何度も炎症を繰り返すと、気管支の腫れはさらに分厚くなり元にもどりにくくなり内腔がだんだん狭くなります。そうすると呼吸も苦しくなり、喘息発作のときも、より重症の発作となりやすくなってしまいます。
ですから、喘息治療は発作が起こったときに治療するのではなく、発作を起こさないように抑え付けて行く治療が主体となっているのです。おもにステロイド吸入薬が使われます。ステロイドはこわい、という印象をもっている方もいると思いますが、吸入でのステロイドが微量であること、気管支粘膜で作用し、全身にはほとんどまわらないので、副作用についてはほとんど問題になりません(喉を経由して気管支に入るので、声嗄れなどの副作用がでることはあります)。
気管支喘息には、小児喘息と、成人になってから初めて発症する喘息の2つのタイプにおおよそ分けられると思います。
小児喘息は、ハウスダストアレルギーを伴っていることが多く、鼻詰まり・鼻水などの症状がよくあります。なるべく鼻からの呼吸が出来るように鼻炎(アレルギー)の治療も重要です。ただ小児喘息は大人になるまでに自然に発作が起こらなくなることが多いです。
耳鼻咽喉科医として診療していると、最近特に大人になってから発症する気管支喘息が増加しているように思います。大人になってから初めて気管支喘息になった場合は、いろいろと厄介なことがあります。
一つは、アスピリン喘息といわれる喘息であることが多いことです。これは、いわゆる痛み止め・解熱剤を飲んだり、座薬などを使うと喘息発作がおこってしまう、という体質を伴う喘息です。鎮痛解熱剤は、体内で気管支を広げる物質の合成を阻害するため、この薬を使うと気管支が広がりにくくなり、喘息発作を誘発してしまうようです。また、成人発症の喘息は、鼻の病気を高率に合併します。鼻茸(ポリープ)がその代表的な病気です。特に、通常の鼻茸と異なり、においを感じる嗅裂と呼ばれる部位に出来ることが多く、したがってニオイがわからなくなる嗅覚障害が起こりやすくなります。また副鼻腔炎も伴うことも稀でなく、手術治療の対象になることもあります。
ということで、最近では呼吸する空気の通り道を一つのものとしての考え方、One Airway, One Diseas (ひとつの気道(鼻から気管支)で起こるひとつの病気)と言う概念が広まりつつあります。