2008.07.01
今年の7月は、とても暑くなるとの、いやな予想です。阪神タイガースの調子がいいのが救いですが。
今回は、扁桃腺(口蓋扁桃)に慢性に炎症がおこることで、体の他の部位に病気を生じることを解説します。
口蓋扁桃などの組織には、リンパ球などの免疫にかかわる細胞(白血球)がいっぱい集まっています。そのためか、口蓋扁桃に持続する炎症があると全身的な病気がおこることがあります。以下に代表的な病気を上げて見ます。
(1)IgA腎症:聞きなれない病気かもしれませんが、口蓋扁桃に慢性炎症があると腎炎をおこすことがあります。健康診断などで、“おしっこ”にタンパクがでていたり、血尿になったりして発見されることがあります。腎臓の一部を採取検査して診断が付きますが、診断がついた場合は口蓋扁桃をとってしまう手術を行います。最近、IgA腎症の患者で口蓋扁桃をとった方が結果的に人工透析にならないで済む患者さんが多いとの報告が出されました。従って、このような診断がつけば積極的に手術を行います。最近では、口蓋扁桃を摘出した後に、ステロイドの治療を加える方法が一般的になりつつあります。
(2)掌蹟(しょうせき)のうほう症: 手のひら、と足の裏だけに、まるでミズムシみたいな湿疹(のうほうを伴う)がでる病気です。これも、慢性的な口蓋扁桃の炎症によって引き起こされる病気です。口蓋扁桃をとる手術で、50-70%の方の湿疹がよくなるとの報告があります。
(3)胸鎖肋骨過形成症: これも慢性の口蓋扁桃の炎症により、鎖骨・胸骨(胸の前・心臓の前にある骨)・肋骨の合わさっている部分の骨が膨らむ病気です。これら3つの骨があわさるところが腫れて、痛むこともあります。
(4)溶血連鎖球菌の感染による病気: 溶血連鎖球菌(溶連菌)の感染がおこると口蓋扁桃に急性炎症がおこり、リウマチ熱、しょう紅熱などの病気がおこることがあり注意が必要です。全身に発疹がでたり、舌がイチゴみたいにぶつぶつに腫れることもあります。その場合、抗生剤(ペンシリン)を10日以上飲まないと再燃することがあります。この細菌感染については、またの機会にお話します(11月―3月に多い病気です)。
ちなみに、口蓋扁桃をとっちゃう手術をしないといけない場合は、(1)何度も扁桃腺が腫れて仕事にならない(仕事・学校を休まないといけない)(目安は年に4回以上)場合、(2)大きな扁桃腺のため、いびき・睡眠時無呼吸が起こっている場合、(3)このページに書いてあるようなIgA腎症、その他全身の病気の原因と考えられる場合、(4)前回のこの通信に書きましたが、扁桃周囲膿瘍を起こした場合(再びおこると大変)、が相当します。