vol.19 味のはなし 2009.7 2009.07.01 味の基本 あじ(味覚)は、“塩み”、“甘み”、”苦み“、”酸み(すっぱい)“の4味質で成り立っていることはご存知かもしれません。ところが、今から60―70年前、日本のある学者が、この4種の味質以外にもう一つ、”うまみ“があると報告しました。当初は受け入れられなかったようですが、やがて確かに”うまみ“は他の4つの味覚とは異なる感覚であると国際的にも認識され、今では権威ある学会の英語論文においても”umami(ウマミ)“という日本語がそのまま採用された味覚の1種になっています。 島国で、魚(いりこ?)・コンブなどのウマミ成分に富んだ食材に慣れ親しんでいる民族であるために、この発見につながったのかもしれません。以来、味覚は、この5種類の組み合わせでいろんな味が表現されることがわかってきました。また“うまみ”にも、いりこダシやらコンブダシなどいろんな種類(グルタミン酸など)があることもわかってきました。塩分とり過ぎの気になる方は、この“うまみ”の感覚を取り入れることで塩から過ぎない食事を楽しむこともできます。今のところ、“あぶら”の味覚だけが、まだわかっていません。牛と豚、鳥、などの食材のあぶらの違いをどこで、どのように判別しているかが、まだ判明していないのです。 食事をするときの、食材を味わう感覚は、味覚だけではなく、におい(嗅覚)、食感(歯ざわり、舌ざわり)、視覚(見た目のおいしさ)、食事をする環境、などによって決まります。 舌における味のマップの間違い 100年以上前に、味の4味質は、舌の部位によって変わるという発表がなされ、わりと最近まで、信じられてきました。苦み、は舌の奥、舌の先は甘み、横は酸味など。ところが、これも実は舌のどの部位でも、味覚はかわらず反応するということもわかってきています。 ところで、味を感じるのは舌だけではなく、うわあごの奥(いわゆる“のどちんこ(口蓋垂)”の横にも味覚を感じる場所があります。喉頭(こうとう)と呼ばれる声を出す器官にも味を感じる細胞の存在が確認されています。 のどごし 暑いこの季節、ビールがおいしいのですが、ビールの喉ごし、ってなんなんでしょう? 特に最初の1杯は、ビール党にとっては、たまらない感覚で、いわば、喉をならすように、グビっと飲んじゃいますね。ビールが喉を通って行くとき、炭酸の刺激、冷たい刺激はのど(咽頭)やら一部の喉頭を刺激します。ここでは、痛みを感じる知覚神経をもちろん刺激するのですが、舌の奥の正中付近には、迷走神経と呼ばれる神経も分布しています。迷走神経は自律神経の一部で、これが急激に刺激されると、ビクっとした感じ、が起こります。おそらくビールが喉を通って行くとき、知覚神経のみならず、この迷走神経の刺激も一役を担っているのでしょう。 その他 ギムネマ茶というお茶があります。これを飲むと甘みがなくなる(一時的にですよ)ことが知られています。これを飲んだあとに、あまーいケーキなどを食べてもおいしくないので、ダイエットにいいかもしれませんが、すぐに効果がなくなるので、やはりダイエットに関しては、自己の“やるき”でしょう。 また、ミラクルフルーツという、そのとおりミラクルな果実があります。グミよりも小さなかわいい実なのですが(東南アジアなど)、この果実を食べたあとに、レモンを食べると、なんと、あまーく感じるのです。 これらの不思議な現象は、味を感じる細胞の、甘みを感じる細胞を一時的に麻痺させたり、すっぱいを感じる細胞だけを麻痺させることで起こる現象です。